絵本コンクールなどで、プロは絵本作品をどういったポイントで評価しているか、ご存じですか?
私が初めて「いぬさん絵本」を1つの作品として製作し、プロ(絵本関連の会社経営をしている素晴らしい方です)に評価頂いた際のポイントについてご紹介します!
ちなみに、評価自体はとんでもなく(愛のある)酷評でした!!
ポイント①:子どもが「体感」できるか
優れた絵本は、子どもが体感するものだそうです。絵本の世界に入り込んで、自分ごととして楽しんで帰ってくる。私が描いた「いぬさん絵本」にはそれがない、と言われました。
それもそのはず、私の「いぬさん」は、娘が生まれる前に、おなかの中にいる赤ちゃんを主人公に重ねるような形で作ったため、基本的に受け身:何もしないのです。
ちなみに、いぬさん絵本制作の経緯は、以下の記事で紹介しています。
【ちなみに】いぬさんのストーリー概要
いぬさん絵本のストーリーを起承転結で表すと、以下です。
- 起:主人公のいぬさんは、おなかが空いていて、様々な他の動物たちに食べ物を「ちょうだい」と言います。
- 承:しかし、なかなか皆(アリや鳥)から食べ物を分けてもらえずに泣き出してしまいます。
- 転:優しい象から、かわいそうだと「りんご」を分けてもらえます。
- 結:いぬさんは、分けてもらった「りんご」をアリや鳥にもに分けてあげて、最後はみんなでおいしく食べます。
受け身なストーリーに対する評価
主人公の「いぬさん」は自分で何もしていません。
この「りんご」をどうやって手に入れるのか、本当はそこに物語の楽しみがあるのではと思います。
何もしないで手に入れた「りんご」と、何かしら主人公の頑張りで手に入れた「りんご」、同じ分ける行為でも、その価値は随分違って見えます。
読者の子どもが主人公に共感できるポイントがあれば、この作品の入り込み方は断然変わってくると思いました。
「絵本に入り込む」。読書も、漫画も、映画も絵本も全て同じ事が言えますよね。この方の言葉からは本当に大事な気づかされました。
ポイント②:画力
実は、画力について正直私は自信がありました!そしてプロからはっきり言われました。
絵については、inusanさんもお分かりかと思いますが、まだまだ画力を磨く必要があります。
そう言われて自分の作品を改めて振り返ると、いろんな未熟さに気づきます。人から真っ当な評価をいただく事は本当に大事ですね。
特に背景は本当に恥ずかしいくらいにラクガキレベルですね。
例えば木や山、草花の描き方など、まじめに勉強しないといけません。動物も、犬の骨格や、鳥の羽の表現、たくさん研究ポイントがあります。
ポイント③本当の世界を描いている事
この世界の本当を描く、とは
単純な画力についてだけではなく、「この世界の本当を描く」事について、以下のようにプロの評価を教えて頂きました。
絵本の絵は、上手に描くことが全てではありません。大切なのは「この世界の本当を描く」ことだと思います。
子どもの本だからこそ本当を描く、これをおろそかにしてはいけません。
「ありさん」が登場する最初のシーンはギョッとします。
「いぬさん」と「ありさん」の大きさ。そして「ありさん」が抱えたイチゴの大きさ。
すべてがデタラメな世界だからギョッとするのです。
この評価を頂いた問題のシーンが以下です。
空想に逃げない事
「絵本は空想の物語」。キャラクターが目立っている事や、楽しい雰囲気で分かりやすいことが大事と、私はそう誤解していました。プロの評価は以下のように続きます。
いぬやありが話すんだからファンタジーですよ、というかも知れませんが、ファンタジーの中にも「本当」はあります。それはデタラメとは違って、その世界のリアリティです。
「ありさん」の描き方を見れば一瞬でinusanさんが空想で描いているのが分かります。
優れた絵本作家(画家)は、必ず観察をします。よく観察をして対象を知り尽くして自分なりのデフォルメをする。それが「表現」です。
ありの足はこんな風に生えていません。
そのうち子どもは分かってきます。ああ、この絵本は本当の世界を描いてないなって。
これが楽しい世界に誘ってくれる絵本との大きな差です。
えほん作家の「かこさとしさん」は、その観察眼で本当に良い絵を描かれます。子どもが大好きになる理由が明確にあるのです。
かこさとし先生の公式Webサイトは以下です↓
かこさとし 公式webサイト (kakosatoshi.jp)
「ありの足はこんな風に生えていません」。本当におっしゃる通りです。奥付に描いたアリの絵、これは何という生き物なのでしょうか・・・。
奥付って何!?という方は、以下をご覧いたければと思います。
ポイント④子供の体験を妨げない事
いぬさん絵本では、アリや鳥が食べ物をいぬさんにあげられない理由を「食べ物を楽しみにして家族が待っているから」としています。
そして、アリと鳥が家族と過ごすシーンに一旦ワープするのですが、これに対してプロの評価は以下の通りでした。
「ありさん」が「かぞくのみんなが」というシーンのように突然、想像の世界に変わると、子どもは置き去りにされてしまうと思います。
大人はなんとなく文脈から、あ、ここはありさん家族の空想のシーンだな、と考えますが、子どもは「お話を耳で聞いて、絵を読んでいます」から、常にリアルタイムで起きていることなのです。
先にも描いた通り、絵本の世界をまさに今体験している真っ最中ですから、それを妨げないように絵が語ることが大切です。
上記で指摘を受けた、ありさんや鳥の家族のシーンは「場面のワープ」でしたが、この他にも「いぬさん絵本」では、時間軸が飛んで行ってしまうシーンがあります。以下のページです。
このシーンに対しても、プロの評価はやはり厳しいものでした。
ラストの「たね」の展開も同じ理由で、時間軸が飛んでいってしまうような描き方は
決してうまいやり方ではありません。
ポイント⑤:無理に教訓を与えない
「いぬさん絵本」では、食べ物をくれなかったアリや鳥に対して、主人公のいぬさんがリンゴを快く分け与えます。しかえしをせずに思いやりの心を持って欲しい、という親心が反映されているように思います。
絵本は決して教訓的なものではありません。
知識を得た大人は、ついそういうものをメッセージに込めたがりますが、身近にある楽しい話を飾らず語ってやれば良いのです。それが子どもにとって本当の楽しみだと思います。
「いぬさん絵本」に対する評価まとめ
上記を含め、全体を通して「いぬさん絵本」に頂いたプロの評価は以下の通りです。
さて、出版についてですが、商業出版としてはまだまだ力およばずが正直な感想です。
自費出版であれば、確かに本にはできますが、inusanさんが絵本作家になりたいならおすすめはしません。
この作品をそのまま出版しても誰にも手に取られず自己満足で終わるのが目に見えるからです。
ですが、商用ではなくても「自費出版」といって、お金さえ払えば印刷会社に製本してもらう方法もあります。これに対して、プロの率直なご意見は以下でした。
自費出版の仕組みは詳しくありませんが、それを専門にする出版社にお金を支払い
印刷製本をしてもらい、ISBNコードを発行してもらって書店に流通させるのだと思います。
自費出版の会社は本が売れなくても利益が出る仕組みになっているはずなので、実際は流通することはまずないと思います。
書店だって限られた棚に、売れない本を置いている余裕はありませんから。
実際、書店で自費出版の絵本を見かけたこともありません。
費用については部数や製本方法に応じて変わります。
身内に配るだけの記念として、なら自費出版の選択も悪くないのかなと思いますが、それを手売りで利益を出すというのは途方もないことです。
最後に:プロから頂いた温かい「激励」
私がご相談したプロの方は、本当に真摯に私の作品を評価して下さいました。この評価を頂いたお陰で「更に絵が上手くなりたい」、「もっと絵の事を知りたい」と本気で思う事ができ、心から感謝しています。
最後に、絵本プロから頂いた激励のお言葉をご紹介します。絵本の世界は、こういった想いを持った方が作っているのですね!
絵本の世界では37歳なんてハナタレ小僧です。90代の現役作家も活躍していますし
50代60代でデビューすることも珍しいことではありません。
絵本は本の中でも不思議な存在で、何十年も読み継がれてきたロングセラーが今でも店頭にずらりと並んでいます。まずはそうした実際に子どもに読み継がれてきた絵本たちを子どもの目線で楽しむことから始めてはいかがでしょうか。
厳しいコメントになってしまったかと思いますが、あくまでもinusanさんが
プロの絵本作家を目指すということでこちらも真剣に応えました。
このプロの方には本当に感謝しています。これからも、基本から学び直して絵本作家への道を一生懸命目指します!
この記事を読んで頂き、ありがとうございました!!
コメント
I read this article fully on the topic of the comparison of
hottest and earlier technologies, it’s awesome article.